映画刀剣乱舞感想

ストーリーについての考察などは全くしていない激浅感想

 

尚、筆者は今までゲーム以外だと花丸と活撃と織田ステしか触れていないため、その他の舞台・ミュージカルやコミカライズ等については又聞きの知識しか無いまま喋っている。

それとゲーム内の回想もいろいろ取りこぼしているので間違ったことを言っているかもしれない。

 

当然ネタバレを含む。

 

 

 

思うに映画、三日月宗近が主役という点で刀剣乱舞のメディアミックスとしてものすごく新しかったのではないだろうか。

三日月宗近刀剣乱舞の(アプリや公式ツイッターの)アイコンであり、おそらく界隈外からもよく見る看板キャラであり、新規にとって「よく知らんが憧れのレアキャラ」的な枠であり、メディアミックスでも登場率が高かった。

が、それは大抵主役としてではなかった。

物語の主役的なポジション(視点人物と言った方が的確か?)は、大概新撰組刀であったり、初期刀の誰かであったり、或いは短刀だったりした。

彼らはだいたい何らかの悩みを抱えていたり、作中で新たに困り始めたりして、それが物語の主題になることが多い。

そして割と多くの場合それは「何故歴史を守らなければならないのか?」という問題だった。

 

「何故歴史を変えてはいけないのか、何故守らなければならないのか」という問いは、ゲーム内の回想でも繰り返し出ている。

ゲーム内では今剣が最初にこれについて直球で語る回想をし、後に不動行光も同系の回想と共に実装された。

歴史を変えてでも元主人を助けたい!というほどアクティブな反抗ではないにせよ、和泉守兼定も元主人が負ける歴史を守ることに葛藤があるという回想だったし、大和守安定も元主人に未練執着の強いキャラクターとして描かれている。

そして彼らは、花丸、活撃、織田ステ、厚樫ミュでそれぞれ主役ポジションになり、何故歴史を守らなければならないのか?という問いと向き合ってきた。*1(織田ステは視点人物という意味では山姥切国広が主役だが、物語としてスポットが当てられていたのは不動行光としてまあよいだろう。)

 

私は織田ステ以外の2.5をスルーしてきたので、そのあたりがどういうテーマをメインにしてきたのかはよく分かっていないが、少なくとも「何故歴史を守らなければならないのか?」という問いは最低4回は扱われているわけだ。

多い。それしかネタがないのか、などと揶揄されていたのも懐かしい。

そしてたまたま、三日月宗近はそれら4回に全て登場している。

刀剣乱舞のメディアミックスはそれぞれが連携を取っているような感じはしないので、恐らく看板キャラだし出しておこう、という感じで、深い意味とかは無かったのだろう。(特にステ・ミュでは回数を重ねるごとに三日月が居ない回も増えているし)

そしてこの4回(厚樫ミュは見ていないが少なくとも3回は)、三日月宗近は何故歴守問題に悩み迷うキャラクターを、年長者として見守り、助け、導くポジションとして描かれてきた。

三日月宗近は優しく、強く、揺らがず、迷わず、主役となるキャラクター達が直面する問題を常に越えた先にいる。全てを知っているかのようにさえ見える。

 

もしかしたらユーザーからは見えないところで設定が存在していて、それに基づいた描写なのかもしれないが、まあ概ねメディアミックス脚本家から見て、三日月宗近はそういう印象を与えるキャラクターなのだろう。

そのように、三日月宗近はよく言えば安定して、悪く言えばワンパターンに、所謂強キャラとして描かれてきた。

 

映画の三日月宗近は、前述のものと比べると、遥かに人間的であったように思う。

ミスるし、(鶯丸に)弱音も吐くし、苦戦する。私は苦戦する三日月宗近を初めて見た気がする。

今まで見てきた三日月宗近は、例え緊迫したシーンであっても、基本的にその鷹揚とした態度を崩さなかった。多少被弾することがあっても、それは真剣必殺などの魅せ場のためのスパイスでしか無かった気がする。

その三日月宗近が今回折れる覚悟すらしていたのだから、三日月自身の「歴史を守ることは難しい」という言葉の説得力も上がるというものだ。

 

面白いのは、この映画も途中までは、いつもの「一人で何でもやれてしまう、何でも知っている三日月」っぽく見えるところだ。

同じ部隊の面子からしたらたまったことではないだろうが、「三日月が一人で何かやっているっぽくて、何考えてるか分からん」というのは、視聴者目線では刀剣乱舞あるあるなのだ。だから捻くれた見方をすれば、「まーた三日月がなんか一人で解決して三日月スゲーってなるんだな」というふうになる。

まあ「一人で」は言い過ぎにしても、今までの三日月宗近は基本的にサポート側であって、他のキャラクターから助けられるような場面が極端に少なく、あってもそれは全て分かった上でそうなるように仕向けて、後から「いやぁ助かった、礼を言う」とか余裕こいて微笑む、みたいな描き方ばかりだったと思う。

 

どこで見たのか忘れてしまったが、「三日月は看板キャラだけど、悩んだり苦戦したりとかが無いから物語の主人公ポジには向かない」というようなコメントがあった。これは、これまで描かれてきた三日月宗近像からすると実際正しい指摘だったように思う。

今回の映画では、そういう今まで築かれてきた三日月宗近像を部分的に踏襲し、そのように見せかけた上で、そうではない三日月宗近像を描いた点で、刀剣乱舞のメディアミックスとして新鮮な面白さがあったと思う。

映画の三日月宗近も、部隊の面々が知らない歴史を知っているポジションではあった。だがそれは別に三日月宗近が天下五剣で強くてよくわからん不思議霊力が強い強キャラだからではなく、単に辿った歴史によるものだという説明が為されていたから、「よく分からんが天下五剣は/三日月宗近はすごいのだ」的なフンワリした描写に終わりがちな傾向があった刀剣乱舞メディアミックスの中では個人的に好印象だった。

 

三日月宗近の描写もそうだが、他にもこの映画では、それまでの「刀剣乱舞あるある」的な要素を上手く利用していたと思う。 

先述の「何故歴守問題」は、一応今回の映画でも扱われている。だがそれは織田ステの不動行光のような、ゲーム回想で何度もやっている「元主人を慕いながら、元主人を殺さねばならない立場の刀」によるものではなく、記憶を失った骨喰藤四郎から発せられる「嫌なわけじゃないけど、なんで?」というシンプルな疑問の形をとっている。

 

「何故大好きな元主人を殺さねばならないのか?」という問いは、映画では既に乗り越えられている。割り切れてはいないにせよ、乗り越えられている。それは本能寺を舞台としながら、不動行光があくまでサブとして立ち回る点で表されている。

そもそも本能寺は、織田ステで既にやっているのだ。だから映画の情報を初めて見た時は、「えっまた本能寺?」となった。不動行光が出演するのもあり、織田ステでやったことをまた映画でやるのか?それ面白いのか?という不安も浮かんだ。

後から考えれば宗三左文字が居ない時点で「織田信長と織田の刀たち」という話をやるわけではないということに気付きそうなものだが、「元主人とその刀たち」という構図はあまりにも刀剣乱舞で頻繁に扱われてきたテーマだったのだ。

そういう状態から始まる映画で、不動行光は最序盤の本能寺出陣で、涙を流し直視することを避けながらも織田信長森蘭丸の「正しい歴史」を受け入れている。織田ステで慟哭し、明智光秀を刺そうとした不動行光は既に過去だ。

不動行光は、織田信長に最も強く執着する刀でありながら本能寺を舞台とした映画でメインにならないことで、この映画が「何を主題とし、何は既にクリアしているのか」を明確にする重要なポジションであったと思う。

私は映画を一度しか見ていないので色々見落としているのだが、ふせったーの感想などを拝見する限り、作中の不動行光の台詞は結末を知ってから見ると意味が全く変わって聞こえる非常に考えられたものになっているらしく、ブラフ的な意味でも重要な役だったのだろう。

暫くリアルが忙しいので二度目を見に行けそうにないが、不動行光はかなり好きなキャラクターなのでまた機会があれば二度目を見たいものだ。

 

元主人に対しては一応そういう決着を付けた上で、「で、刀剣男士が守る歴史ってなんなの?」という問いを発する役が骨喰藤四郎であり、それに対する一つの答えを出すのが三日月宗近であった。その歴史観を通して三日月宗近という刀剣男士を掘り下げたのがこの映画であった。

正直途中まで、何故骨喰なんだろう?と薄々思いながら見ていた。

骨喰は割と好きなキャラだったし、ゲームの足利回想はとても好きなのだが、本能寺が舞台の話で足利宝剣がピックアップされる意味もよく分からなかった。

 

そもそも映画の骨喰藤四郎、マジで口数が少ないのだ。大丈夫か?ってくらい喋らない。

元々口数の少ないキャラクターではあるのだが、ゲームだと仕様上他のキャラと発言する回数自体はあまり変わらない(一度の発言の文字数はめちゃくちゃ少ないが)。それが会話になると本当に喋らない。

映画での骨喰藤四郎は新たに顕現した刀剣男士というポジションで、まだ他の刀剣男士と関係性が築けていないせいかもしれないが、ゲーム以上にか弱く儚い印象を受けた。(ステの骨喰はどんなもんだったのか気になるところである)

私は骨喰藤四郎に対して、割とドライで物事をズバズバと言うような、儚さとは別方面のイメージを勝手に持っていたので、映画のキャラ付けは意外だった。*2それもあって、「あんまり喋らないし、織田と関係あるわけでもないし、さほど目立ってもないし、言っちゃなんだけど大人気キャラってわけでもなさそうなのに*3なんであえて骨喰なんだろう?足利宝剣好きなのかな?」などと雑に感じていた。

足利宝剣という繋がりは、確かに物語中では「理由も聞かずに三日月の頼みを受けてくれる」という部分で生きてはいる。だがそれ以上に、「元主人への執着が発生し得ない骨喰藤四郎が何故歴守問題を口にする」ことが重要だったのではないかと今思う。(骨喰藤四郎の性格なら、例え三日月宗近と史実的な繋がりが全く無かったとしても、隊長の指示として頼まれ事くらいはしてくれそうにも思う。)

 

不動行光も骨喰藤四郎もそうだが、この映画では一見あまり目立っていないように見えるキャラクターが実際はかなり重要な役割を担っていることが多く、人選に無駄がないことも見ていて快適な理由の一つだと思う。

勿論普通に目立っているキャラクターの出番も良いもので、個人的には日本号がとてもかっこよかった。

私は元々日本号にさほど執着が無いのだが、黒髪に作業着(?)というリアル寄りな容姿のせいもあってか、存在に安定感が感じられて良かった。

映画の中でへし切長谷部三日月宗近と対立するポジションになっていて、ともすればこいつずっと怒ってんなみたいになりそうだったのだが、日本号とのやり取りがコミカルなおかげもあり「こいつ悪いやつじゃねえわ…」と思えるようになっていて上手かった。へし切長谷部のヘイトコントロールがすごいみたいなふせったーを読んでかなり納得したので、今これを読んでいる人も見つけたら読んで欲しい。

あと、私は不動行光が好きなので、日本号が不動行光に酒ネタなどで親しげに接していたのも楽しかった。

へし切長谷部といい不動行光といい、日本号はやや扱いが難しいタイプの相手と接するのが上手いのかもしれないと思った。かっこいい~。

 

あと、出陣していたわけではないが強烈に印象が強かったところで、鶯丸が非常に良かった。

三日月宗近が主人公として掘り下げられ、今までありがちだった超然とした三日月宗近像が解体されてく傍ら、鶯丸は今回ずっと強キャラだったように思う。

終盤の本丸襲撃展開に至るまで特に派手な出番が無いにもかかわらず、「この鶯丸は強い……」と思わせるような空気がビシバシ醸し出されていた。

出陣前の編成発表時の不動行光に対する気遣いの上手さや、三日月宗近に対する踏み込みすぎずしかし心強い距離感などで、無駄なく最大限にかっこよかった。

 

薬研藤四郎も私は元々特に推していないキャラクターなのだが、今回は「元主人を殺すことに対する葛藤を物語のど真ん中には持ってこない」という映画の構成と薬研藤四郎のキャラクター性がベストマッチしていたような気がする。

薬研藤四郎について日頃から深く考えているわけではないので薬研推しから見たら全然違うことを言っているかもしれないが、薬研はよく「織田信長を拗らせている織田刀の中で、織田信長への想いがあんまりクローズアップされない」というようなことを言われているように思う。

不動行光は言うまでもないし、へし切長谷部も不動とは別方向に織田信長を拗らせているし、宗三左文字は前の二振ほどではないにせよ織田信長に対して色々と思うところがあるということはこれまでも繰り返し触れられている。だが薬研藤四郎にはそれがあまりない。

そのせいで、「何故大好きな元主人を殺してまで歴史を守らなければならないのか?」をテーマとする物語だと、薬研藤四郎は浮いてしまいがちだ。

それが今回、「燃えて記憶喪失」という設定を持つ骨喰藤四郎を出した上で、薬研藤四郎が「俺は何か大事なことを忘れている……!」と安土城を見上げるシーンは鳥肌が立ったし、あの役は薬研藤四郎でなければできないだろう。

あと全然関係ない脳直の感想として脚がめっちゃ細くてすごかったのと、前髪のM字バングの完成度がすごかった。

 

山姥切国広だけは何ポジションだったのかちょっとよく分からなかったけど、織田ステの時から布を自在に操った殺陣がすごいな……と思っていて、それは今回も健在だった。

山姥切国広は織田信長とも、他の出陣メンバーとも特に史実的繋がりがなく、かなり部外者な立ち位置だった。だから山姥切が最もこの話を「普通の任務」と捉えられる立ち位置で、それに意味があったとかだろうか?

でも山姥切が特に視点人物になっていたわけでもないので違うか。ちょっと山姥切については見てなすぎた。ごめん。

私は織田ステを見てから映画を見たので、織田ステで隊長をやっていた山姥切の印象が強く、不動行光が何故歴守問題を乗り越えていることからも映画本丸と織田ステ本丸は同一なのか?と思ったりもしたが、細かい台詞を聞く限り色々矛盾があるのでやはり違うらしく、「ステ本丸と映画本丸を繋ぐキャラ」というわけでもなさそうだ。

 

ところで、映画が意図してやったのかは分からないが、それ以前のメディアミックスと比べても、今までで一番遡行群が恐ろしく感じられたように思う。

2.5は色々見ていないので分からないが、一番苦戦していたんじゃないだろうか?

活撃あたりもそれなりに苦戦したとは思うのだが、蜻蛉切が普通に復帰したのもあって結局これは誰も折れんわ~という空気感ができてしまい、終盤は話が土方組の何故歴守問題になってしまったのもあり、遡行群の恐ろしさは割と薄れてしまっていた気がする。

今回は戦闘シーンの熱さや、三日月が苦戦するという今まで無い展開のせいもあるが、織田信長が遡行群を従えるシーンなどではただ行儀よくそこにいるだけでも「こいつはヤベェぞ」と感じられるようなオーラがあったように思う。

あと、なんとなく他に比べて刀剣男士に疲労の概念がちゃんと存在している感じがしたので、「無限湧きする遡行軍」のヤバさがよく分かった感じがする。

そりゃ、疲労が無いならいくら湧いてもザコ敵はザコ敵ってなっちゃうもんな。

 

無銘に関しては既に色々言われていると思うのだが……個人的には何故ああいうことになったのかが割とずっと気になりながら見ていたので、あんまり説明がされずに唐突に解決されてしまったことは少し物足りなかった。どういうことだったんだろうあれ。

これに関してはちゃんと何度も見て理解したら意味が分かってスッキリできるのかもしれない。

 

特にまとまっていない浅い感想だったが、要するに面白かったのでもう一回見たい。配信来ないかなあ。

あとEDがめちゃくちゃかっこよくて好きでした。

*1:何故歴守系回想でいうと鯰尾藤四郎も名が挙がるが、彼の場合元主人への執着からではなく記憶喪失コンプから来た台詞と思われるため、やや性質が違うものとしてここでは置いておく。あっちの問題もそのうち掘り下げられるのか?と期待していたが、極を見るに特に無さそうだな……

*2:極などを見るに儚い感じの方が正解なのかもしれないとは思う。

*3:私は骨喰を割と好きだしdisではない。単にめちゃくちゃ人気キャラという感じはしないというだけだ