感情に名前を付けられたら逆に分からなくなった

アプリゲーのALTER EGOをクリアした。

音楽もいいし、絵も可愛いし、雰囲気も好きだし、楽しんだ。

私はゲームが下手くそなので、難しくないのもありがたい。

楽しんだのだが、クリア後のちょっとした台詞が引っかかってしまって、まだ飲み込めていない。

尚、この引っかかりは私が勝手に引っかかっただけであり、ALTER EGOの出来に問題があるわけではない。

 

めちゃくちゃネタバレを含むので、まだ真エンドを見ていない人はこの記事を読むことをおすすめしない。

 

 

 

最初は診断結果のスクショばかり見かけたので、またなにか性格診断が流行ってるのか~と思いつつ、出所がよく分からずにいた。

途中で可愛い女の子が発狂するゲームだと聞いて、なにそれなにそれ!とプレイしてみた。不純。

エスは実際可愛くて、塩加減とデレ加減の塩梅がめちゃくちゃ好みだった。

 

エスのどこがツボに入ったのかは言語化しにくいのだが、なんかこう、やっぱり、つれないところが可愛い。タップすると嫌がるところ。そりゃ、他人に触られたら大抵嫌だよね。そういう造型がとても好きだ。

あと、ゴシック調な衣装の黒髪美少女というのは、やっぱりいい。

近年稀に見るツボにきた女キャラかもしれない。

 

診断結果で、特定の性格の部分について「貴方のそういうところ、私は好きよ」みたいなことを言われた時にはキャッてなった。キャッエスちゃんに好きって言われちゃったキャッ。嬉し嬉し。

「貴方と話す時間が楽しい」って言われた時は、ワイももっとお話したい~!って思ったし、「貴方の首に手をかけたい」って危険な衝動を告白された時はなにそれ……えっちじゃん……むしろ良い……と思った。首絞めが好きなので。

頬杖ついてる絵が好きで可愛いなあ……と眺めたし、膝枕っぽい構図の絵は思ったより親密っぽいことしてくれるんだな……意外とデレるな……などと嬉しかった。

 

一周めがIDエンドだったので、三章に入って徐々に精神が壊れていく様を見てつらくなったし、いよいよ発狂した時はそんな……そんな……と狼狽えた。

発狂してる時の台詞が妙にセックスを想起させるので、序盤の発言と合わせて首絞め逆レか?最高だな……などと少し邪念も混ざったが、やっぱりあのエンドは悲しい。

いや、壊れた世界で永遠にエスと愛し合うのはそれはそれで良いけど、でもそれは真エンドを見た後だからこその感想であって、あのままはやっぱり悲しい。

 

2周めのSEエンドでは、自己否定するエスにそんなこと言うなよぉ……って悲しかったし、おめでとう!とか言いやがる壁王になんだァテメェ!!となった。

 

だから3周め、AEエンドに行けた時は嬉しかったし、「私をあなたの旅の道連れにしてほしい」って台詞をすごく素敵に感じてじんわりした。

 

私はゲームをする時は「このゲームの主人公はこんな感じかなあ」と架空の主人公像を想像しながら遊ぶタイプなので、私自身が直接エスと対峙するイメージで遊んでいたわけではないのだが、架空の主人公を通して確かにエスを好きだったと思う。

のだが、エスがクリア後の雑談で、旅人(プレイヤー)への感情を恋と定義したところで、突然いろんなことがよく分からなくなってしまった。

 

今までエスが言ってた「好き」って、そういう「好き」だったのかん?

私はエスをすごく可愛いと感じて、顔も好きだし、言動も好きだし、幸せになってほしいとか、旅人がエスにとってなにか嬉しかったり楽しかったりする相手であれたらいいなあ、とか思っていたけど、エスは旅人に恋してたんだよということにされると、なんかそういう風に感じていたものが急によく分からなくなってしまった。

別にそれまでのエスの言動が変わるわけではないのになんでだろう。


エスが旅人を好きなところと、私がエスを好きなところはあんまり変わらないのに、何故そこに恋というラベルを付けられると急に分からなくなってしまうのかが、自分でよく分からない。

好きなところが同じなんだから、私もエスに恋してるんだろうか?うーん、なんか違う気がする。

 

エスは旅人の性格を好ましいと思っていて、旅人と話すのが楽しくて、旅人と一緒に居たいと言う。

私もだいたいエスに対して同じようなことを思っていたのだが、旅人とエスは恋人になるよ!と言われると、なんかしっくりこない。


しっくりこないも何もエスがそう言ってるんだから公式は旅エスなんだよと言われたら黙るしかないのだが、私が恋を分かっていないので、架空の主人公が恋愛する様を上手く想像することができない。

折角話が綺麗に終わったのだから、旅人とエスはお互いが望む形で共に在ってほしいのだが、私の架空の主人公はエスの望む形で在ることができないので、すっきりしない。

 

なんかこう、日本語だと思って良い歌だな~と思っていた歌が、実は全然知らないどこかの言葉がたまたま日本語に聞こえていただけで、歌自体は何も変わっていないのに、私が聞き取っていた歌詞はただの空耳だったと気付いたみたいな、そんな気持ちになっている。


こうしてみると、私はエスの振舞いを好きだったのではなく、エスの振舞いの向こうに幻視した架空の感情を好きだったのか。

私は恋愛っぽい仕草が苦手なのだと思っていたけど、どうもそれは違っていて、それが恋愛だと認識すると苦手になってしまうようだ。

出来事は変わらないのに、その向こう側に勝手に見出した意味のせいで、全然違って見えてしまう。

とはいえ、「じゃあ恋だと言われる前はどういう感情だと思ってたのか?」と聞かれると、そこにしっくりくる言葉を探すのも難しい。

 

こんなことでめちゃくちゃツボなエスを迷いなく好き!って言えなくなるの損だな……

好きなものが減るの損でしかないし、あんまり理屈も通っていなくて、残念だ。

冒頭にも書いているけどこれは作品が悪いわけではなくて、自分のよく分からない好き嫌いで好きなものが少し減ってしまうことがかなしい。


きっとあの展開は、「ひとり」の別人格であった旅人とエスが、それぞれが自ら望んで「ふたり」になって、そうしてやっと他者として認めたことを「恋」という結果で表しているのだと思うが、なんでそういうポジションをあらゆる人間関係の中で「恋」が我が物顔で独占しがちなのか、まだ納得のいく答えが見えてこない。


良い友人だと思っていたら交際を申し込まれて萎えるみたいなやつを無駄にゲームで体験してしまった。

喪なのでリアルでそういう経験が無いのだが、これが近いやつなのか。

確かに萎えるわこれ。

 

よくわからなくなってしまったせいもあるが、AEエンド後に話しかけた時の本を抱えてしおらしい顔をしている絵よりも、元々のページを捲りながら冷ややかな目線を向けている絵の方が好きだったのもあり、攻略途中のエスに若干の恋しさを感じている。

それでちょっとだけまた退行したくなったけど、エスが悲しそうだったのでやめた。

 

当たり前だがメタな話エスは二次元なので別に自我とか無いことは大前提である。